無人惑星サヴァイヴ感想

第十話  家をつくろう

『みんな大変! 私たちのメノリ様がリーダーの座を追われてしまったの! メノリ様の代わりにリーダーになったのは元気が取り柄のルナ。いったいどれほどのリーダーをやれるのかお手並み拝見って思ったのに、なんてことかしら。全然たいしたことないのよ!! 木の上にいえを作るなんて思いつきの提案をした上に計画性もないから、それはもちろん大失敗。それに問題児のハワードを抑えることもできないし、ルナなんて全然ダメじゃない。あーもう! どうしてメノリ様がリーダーを辞めさせられないといけないのよー!! そんな中起こった大事件! シャトルが何者かに壊されてしまったの!!! 粉々になったシャトルにみんな大ショック。ほんとにこれからどうなっちゃうのー!!!! 』

 久し振りなのでテンションあげようと「!」多めで始めてみました(だから何だと)。
 ルナはダメじゃないですよ。仲間の気持ちを一番に考える立派なリーダーです。ただ、このころのメノリ視点で見ると、上のような感じになるなと思うわけです。メノリの理想とするリーダー像にルナが当てはまらないわけですね。だから何故自分がリーダーでは駄目だったのかわからない。わからないから納得もできない。
 今回はそんなメノリの葛藤がメイン……ではなく、ルナをリーダーにみんながまとまっていく話なんですが、やっぱりメノリ様を追いたいと思います。だってこれはメノリ様ファンクラブ通信だから(笑) でもこの回、結構ハワードも面白いです。でもメノリ重視(しつこい)。

 それにしてもシャトルは派手に壊れてますね。どんな暴れ方をしたらこんな形で壊れるのかちょっと不思議(笑)。小さくても宇宙船なんだから相当強度はあるなずなんですが、ほんとに力持ちなんだなあ……。
 必死でバイオリンを探すメノリ様と、無事見つかってほっとするメノリ様はかわいくて私にとっては萌えですが、ハワードは憤慨。

「シャトルが壊れたってのにバイオリンの心配かよ!」

 八話の「殺して食わなきゃこっちが死んじまうんだ」なんかもそうですが、ハワードが言うことって、意外に正論だったりしますね。でもその背後にあるのはハワード自身の感情であって、客観的な状況判断じゃないので、ちっとも回りに感銘を与えられません。素直といえば素直で、後半はこんなところも彼の愛嬌になっていくわけですが、このころはどうにも腹立たしいだけです。
 足跡発見でシャトルを壊した犯人はいつかの怪物らしいということがわかりますが、そこでもハワードは困ったちゃんです。

「どうするんだ! 寝るところも火もないんじゃ」

 シャトルが取り残されたときや、ここが島だとわかったときもそうだったように、ハワードは全然考えない。誰かに「どうするんだ?」「どうしてくれるんだ!?」って全部押しつける。この後のセリフもそんなのばかり。
「ここで野宿!? あの怪物がいるかもしれないんだぞ!?」
「シンゴ、(いえは)いつできる?」
 その上、火の番はハワードだったのにと責任を問われても、ベルが火をおこせばそれで解決という態度。昼間家を壊したことも、全然気にしていませんね。
 こんなハワードが自分で考えて何かをしていくようになったのはいつ頃からでしたっけ? 今後注目していきたい点です。

 さて、それはそれとして、シャトルがない以上いえを作らなければどうしようもないとルナが言います。そうは言われてもすぐにはぴんと来ないようでみんなの反応が薄い中、この時言葉を添えるのがカオル。いえ作りの時も積極的に動いていましたし、カオルはカオルなりにこの状況を生き延びるために必要な事柄を考えているようです。ただ、この時は後半の彼のように率先して号令をかけるとこまではしませんね。カオルのいる位置も洞窟の一番奥だしね。後半の彼なら入り口近くでみんなを守るポジションにいるはず。この頃のカオルは最低限必要なことしかするつもりがないようです。

 いえを作るということになって、具体的に部材の心配をみんなでしていく中、シャトルの羽根を使えないかというルナのアイデアが明るく受け入れられます。
「いいアイデアじゃない。やっぱりルナがリーダーで正解だったね」
 ……いやちょっと待ってシャアラ。それをメノリの前で言うのは……。悪気はないんだろうけど、無自覚に残酷だわね、あなた。
 それに反発したというわけでもないでしょうが、翼を使おうにも運べない、アイデアは良くても実行不可能だとメノリが待ったをかけます。

「不用意な発言はみんなを失望させ、統制を乱す。リーダーとして最っ低だぞ」

 最っ低のところに力入っています。何しろリーダーを下ろされてから今までずっとくすぶっていたものを、ようやく表に出したのですからね。色々こもってますとも。
 メノリにとっての正しいリーダー像とは、まさに「正しく」なければならないのでしょう。リーダーは間違うということは許されない。最初のいえ作りの時も見通しの甘さと計画性のなさで失敗したルナが、同じ過ちを繰り返しそうになって、どうにも我慢できなくなったんでしょう。なんでこいつがリーダーやねんって相当イライラしていると思われます。メノリにはルナはリーダーとして充分だとは思えないのに、リーダーを決め直そうって話も上がらないしね。なんでやねんって思うよねえ。メノリがルナの良さに気づくにはもう少しかかります。

 夜が明けていえ作り開始。ここでまずいいところをみせるのがシンゴ。壊れたシャトルの部材が役にたつよって滑車を披露。ものを作るっていうことが本当に好きなんだなあっていうことがよく分かります。好きこそものの上手なれということでしょうか。好きだから前向きにやる気もわくし、アイデアもどんどん出てくるのでしょうね。
 ベルは種火を持って行くとか火の始末をきちんとするとか、細かなところまで知識と気遣いを披露。もっと楽に火をつけられないのかというこのときのチャコの言葉に、きっとそのうち楽な方法を手に入れるんだろうなと思っていたのですが、結局最後までそんなものは出てこなかったですね(笑)
 ハワードはやはり反省の色なし。
「(火が)消えたらまたベルがつけてくれるさ」ですと。
 仕事の役割分担にしても、
「火はぼくが責任を持って」ですと。
 さっき消えたらベルがと言った同じ口でよく言えたものです(笑)。
 それでも「ぼくまで働かなくちゃいけないのか」と文句を言っていた頃に比べれば進歩なのかな。後半でいえ作りの作業もがんばってますしね。
 カオルはここも不言実行。

 メノリは釣り竿を渡されて憂鬱そうです。リーダーについて納得できないということもあるのでしょうが、自分の行動の指針が立てられないのでしょうね。木の上にいえを作るしかないといっても、それが難しいことであるのは今も変わらないのですから、この方針で動いていくことに乗り気になれないんじゃないでしょうか。

 そうして別れて仕事をしているところに怪物登場。ナノマシンパワーでシャトルが壊れた理由も判明するのですが、あれから一晩中こんなふうに暴れていたのかしら。かわいそうに。そりゃあ破片を抜いてくれたルナに懐きもしますよねえ。
 仲良くなってきたところにハワードが帰ってきます。魚四匹となんとも立派な釣果をぶらさげて。
 ついこの間まで食料がないと騒いでいたときはカオルもシンゴもろくに釣れなかったようなのに、ハワードってばすごいわ。きっとまともに釣ったんじゃないんだろうなぁ……なんて思ってしまったよ。ごめんねハワード。

 ハワードの大声で怪物が逃げた後、すぐにルナに駆け寄って大丈夫かと気遣ったメノリにきゅんとなった私はどこまでもメノリ様ファンのようです。

 怪物対策の柵も作り(みんな仕事が早いな)、みんなで話し合う中、一人離れたところに座っているのはカオル。いえ作りは積極的に手伝うけど、なれ合うのは嫌なのでしょうか。必要以上に関わりたくないというよりは、関わらないようにしようと思っているのかもしれないですね。みんなとの距離をどうとるか、この頃はカオルの中でもけっこう揺れているんじゃないかと思います。

 あの怪物が優しいならいえ作りを手伝ってもらえばいいというハワードの言葉に、おおいに乗り気になるルナにはみんなあきれ顔。
「もし(あの怪物が)凶暴なやつなら」
 とルナの軽率さをたしなめるメノリの言葉に鋭さがないのも、呆れが先にたっていたからかも?

 翌日もいえ作り。木を切る作業にやっぱり参加しないメノリ。
「見てないで手伝えよ!」
 というハワードの言葉にも応えないメノリ。
「やっと一本か」
 という言葉は、やはり自分たちでいえを作ることは不可能ではないかという危惧が含まれているのではないでしょうか。状況からいえば、いえを作るしかない。けれど、今の自分たちではそれが難しいこともまた事実。ではここでどういう手を打てばいいのか。それを考えてるんじゃないかと思うのですが。メノリびいきが過ぎますか?
 考えてるからって作業しなくてもいいということではありませんが、すねているだけではないと思うのですよ。

 木の倒し方がワイルドだねっていうところはもはや突っ込む気力がありませんよ。もう彼らの体力を問題にするだけ無駄な気がしてきた……。

 この後オオトカゲに襲われたシャアラ姫とルナ王子をかけつけた大きな騎士が助けてくれまして、怪物は優しい動物だったということがみんなにもわかってもらえます。
「確かに大きいな」
 ってカオルがなんだか楽しそうです。大きな動物が好きだなんて、男の子っぽくて可愛いじゃありませんか。

 怪物にいえ作りを作業を手伝ってもらい、シャアラによってパグゥと名前も決定。
 羽根を二枚一度に運ばされて(せめて一枚ずつにしてあげればいいのに)苦しそうなパグゥに、メノリは厳しい一言。
「もう少しだ。続けさせてくれ」
 情が薄いと言えばそうなんですが、メノリはこれまでもずっとそうでしたね。目的とそれを達成する結果の方が重要で、感情は二の次。
「あの山に登ってから帰る」「一人の失敗でみんなが迷惑する」「統制が乱れる。認めるわけにはいかない」「(なんでも殺して食わなければならないという)ハワードの意見に賛成だ」
 責任感と義務感が強すぎるんでしょう。たどり着くべき目標にたどり着くのが全てというか。
 冷たく聞こえるメノリの言葉は、だけどメノリがいえ作りにやる気になった表れでもあります。パグゥの協力でいえ作りが実現可能な事柄となった以上、メノリは積極的に動くことができるようになったということです。木の上にいえをつくるということが、メノリにとっても目指すべき目標となった。だからメノリの言葉は厳しいのです。辛くてもやるべき事ならやらなければならないというのが、メノリの方針ですから。それを無自覚に他の人間にも押しつけるのが、この頃のメノリの一番の欠点なんですけどね。

「仲間、か……」

 カオルのつぶやきは複雑です。パグゥが仲間だということより、その仲間の中に自分も含まれているということの方が彼にとっては問題なんだと思います。

 いえ作りがうまく行きそうな希望が見えたところで次回に続く。

 ところで、ハワードですが、冒頭でかなりの困ったちゃんぶりを披露した割に、後半はかなり良い感じです。釣った魚を自慢するところも、怪物をぼくがおっぱらったんだと胸をはるところも、ぼくのおかげで翼が平らになったんだと機嫌良く語るところも、嫌みな感じが少ないですね。無条件にハワードJr.だから偉いと威張っているのではなく、あくまでハワード基準ですが、成果の上がった手柄を誇っているからでしょうか。パグゥに命令をして怯えさせたことを皆に無言で責められ、やや慌てるところも可愛いです。いいことと悪いことを多少なりとも気にするようになってきているのですから、かすかな成長が見られるといっていいのかもしれません。
 いえ作りの作業も、ちゃんと協力していましたからね。

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