第十話 家をつくろう 『みんな大変! 私たちのメノリ様がリーダーの座を追われてしまったの! メノリ様の代わりにリーダーになったのは元気が取り柄のルナ。いったいどれほどのリーダーをやれるのかお手並み拝見って思ったのに、なんてことかしら。全然たいしたことないのよ!! 木の上にいえを作るなんて思いつきの提案をした上に計画性もないから、それはもちろん大失敗。それに問題児のハワードを抑えることもできないし、ルナなんて全然ダメじゃない。あーもう! どうしてメノリ様がリーダーを辞めさせられないといけないのよー!! そんな中起こった大事件! シャトルが何者かに壊されてしまったの!!! 粉々になったシャトルにみんな大ショック。ほんとにこれからどうなっちゃうのー!!!! 』 久し振りなのでテンションあげようと「!」多めで始めてみました(だから何だと)。 それにしてもシャトルは派手に壊れてますね。どんな暴れ方をしたらこんな形で壊れるのかちょっと不思議(笑)。小さくても宇宙船なんだから相当強度はあるなずなんですが、ほんとに力持ちなんだなあ……。 「シャトルが壊れたってのにバイオリンの心配かよ!」 八話の「殺して食わなきゃこっちが死んじまうんだ」なんかもそうですが、ハワードが言うことって、意外に正論だったりしますね。でもその背後にあるのはハワード自身の感情であって、客観的な状況判断じゃないので、ちっとも回りに感銘を与えられません。素直といえば素直で、後半はこんなところも彼の愛嬌になっていくわけですが、このころはどうにも腹立たしいだけです。 「どうするんだ! 寝るところも火もないんじゃ」 シャトルが取り残されたときや、ここが島だとわかったときもそうだったように、ハワードは全然考えない。誰かに「どうするんだ?」「どうしてくれるんだ!?」って全部押しつける。この後のセリフもそんなのばかり。 さて、それはそれとして、シャトルがない以上いえを作らなければどうしようもないとルナが言います。そうは言われてもすぐにはぴんと来ないようでみんなの反応が薄い中、この時言葉を添えるのがカオル。いえ作りの時も積極的に動いていましたし、カオルはカオルなりにこの状況を生き延びるために必要な事柄を考えているようです。ただ、この時は後半の彼のように率先して号令をかけるとこまではしませんね。カオルのいる位置も洞窟の一番奥だしね。後半の彼なら入り口近くでみんなを守るポジションにいるはず。この頃のカオルは最低限必要なことしかするつもりがないようです。 いえを作るということになって、具体的に部材の心配をみんなでしていく中、シャトルの羽根を使えないかというルナのアイデアが明るく受け入れられます。 「不用意な発言はみんなを失望させ、統制を乱す。リーダーとして最っ低だぞ」 最っ低のところに力入っています。何しろリーダーを下ろされてから今までずっとくすぶっていたものを、ようやく表に出したのですからね。色々こもってますとも。 夜が明けていえ作り開始。ここでまずいいところをみせるのがシンゴ。壊れたシャトルの部材が役にたつよって滑車を披露。ものを作るっていうことが本当に好きなんだなあっていうことがよく分かります。好きこそものの上手なれということでしょうか。好きだから前向きにやる気もわくし、アイデアもどんどん出てくるのでしょうね。 メノリは釣り竿を渡されて憂鬱そうです。リーダーについて納得できないということもあるのでしょうが、自分の行動の指針が立てられないのでしょうね。木の上にいえを作るしかないといっても、それが難しいことであるのは今も変わらないのですから、この方針で動いていくことに乗り気になれないんじゃないでしょうか。 そうして別れて仕事をしているところに怪物登場。ナノマシンパワーでシャトルが壊れた理由も判明するのですが、あれから一晩中こんなふうに暴れていたのかしら。かわいそうに。そりゃあ破片を抜いてくれたルナに懐きもしますよねえ。 ハワードの大声で怪物が逃げた後、すぐにルナに駆け寄って大丈夫かと気遣ったメノリにきゅんとなった私はどこまでもメノリ様ファンのようです。 怪物対策の柵も作り(みんな仕事が早いな)、みんなで話し合う中、一人離れたところに座っているのはカオル。いえ作りは積極的に手伝うけど、なれ合うのは嫌なのでしょうか。必要以上に関わりたくないというよりは、関わらないようにしようと思っているのかもしれないですね。みんなとの距離をどうとるか、この頃はカオルの中でもけっこう揺れているんじゃないかと思います。 あの怪物が優しいならいえ作りを手伝ってもらえばいいというハワードの言葉に、おおいに乗り気になるルナにはみんなあきれ顔。 翌日もいえ作り。木を切る作業にやっぱり参加しないメノリ。 木の倒し方がワイルドだねっていうところはもはや突っ込む気力がありませんよ。もう彼らの体力を問題にするだけ無駄な気がしてきた……。 この後オオトカゲに襲われたシャアラ姫とルナ王子をかけつけた大きな騎士が助けてくれまして、怪物は優しい動物だったということがみんなにもわかってもらえます。 怪物にいえ作りを作業を手伝ってもらい、シャアラによってパグゥと名前も決定。 「仲間、か……」 カオルのつぶやきは複雑です。パグゥが仲間だということより、その仲間の中に自分も含まれているということの方が彼にとっては問題なんだと思います。 いえ作りがうまく行きそうな希望が見えたところで次回に続く。 ところで、ハワードですが、冒頭でかなりの困ったちゃんぶりを披露した割に、後半はかなり良い感じです。釣った魚を自慢するところも、怪物をぼくがおっぱらったんだと胸をはるところも、ぼくのおかげで翼が平らになったんだと機嫌良く語るところも、嫌みな感じが少ないですね。無条件にハワードJr.だから偉いと威張っているのではなく、あくまでハワード基準ですが、成果の上がった手柄を誇っているからでしょうか。パグゥに命令をして怯えさせたことを皆に無言で責められ、やや慌てるところも可愛いです。いいことと悪いことを多少なりとも気にするようになってきているのですから、かすかな成長が見られるといっていいのかもしれません。 |