無人惑星サヴァイヴ感想

第五話 シャアラ、負けちゃだめ!

 お疲れ様です。「書くのはいいけど誰が読むのかこの文章」もやっとこ五話ですよ。流石に長すぎて書くのもしんどくなってきた(笑)のですが、やっぱり今回も長いのです。

 さて、冒頭でシャトルが大きく揺れる中、シャアラが誰よりひどく怯える姿が痛々しいです。他のメンバーがそれほど騒がないので、一番臆病な性格なのだということが強調されているように見えますが、シャアラがこんなに怯えるのはやっぱり昨日の経験が尾を引いているからでしょう。
 海蛇に食べられかけたんですもの。
 ルナが助けに来て側にいてくれたとはいえ、倉庫の隅で海蛇がその扉を壊して迫ってくるのを間近に見ていたんですよ。OPでも見られるシーンですが、あの目玉が目玉がぁぁあ!!!
 怖いよ! 夢に出てくるよ! メノリ、「まさか昨日の」とか言わないでぇぇぇ。「昨日のやつと決まったわけじゃない」とも言ってくれますが、昨日のやつじゃなくたって、怖い生き物なら一緒だよ。
 同じ目にあったルナともっと嫌な目にあったベルはそれほど怯えてないけど、それは二人が天晴れなのであってシャアラが情けないのではないと思います。
 ここでハワードがいい活躍をしてくれますね。何って記念すべき第一回目の「パパ〜!」ですよ! それまではシャアラに向かって「ぎゃあぎゃあうるさい女だ」とかなんとかカッコをつけてますけど、とうとう耐えきれなくなってしまって叫んだハワード。おかげでシャアラもびっくりして、一瞬だけですが恐怖が薄れたようです。
 よかった。よかった。あのままずっと怯え続けていたら、ひきつけでも起こしたかもしれません。
 ハワード! Good Job!!

 この後手分けしてみんなで色々やることになるのですが、この回はそれぞれの性格とこれからの立場や役割について色々思うところがあったので、キャラ別に(長々と)語りたいと思います。
 
 最初はメノリ(やはりか)。彼女の場合、生徒会長で風紀委員という登場の一話からずっと見えていた仕切り屋さんな性格と役割がさらにはっきりしていくのですが、彼女がただの偉そうな仕切りたがりの出しゃばりではなく、リーダーを気取るだけの実力がちゃんと備わっているということがわかるんですよ、この回は! いやこの回も!(強調)
 しばらくはここで過ごすことになるだろうからそのつもりでと、大きな目標・方向性を提示した後で、荷物のチェックに水と食料探し等、具体的な行動指示をするという、集団を統率する上での基本かつ高等テクニックを披露するメノリ。彼女がリーダーシップマニュアルを非常によく読み込んでいることが伺えます。シンゴ達は通信機、他の者で食料と水探しと役割分担もてきぱき。彼女がお飾りの生徒会長ではないことがよくわかる見事な統率力です。
 さらにメノリがすごいのは、森へ行くカオル達に危険だからとカッターナイフを渡したり、ルナに水を確保するため川を探してくれと言ったり、出発するときは暗くなる前に帰ってくるようにと指示しておく等、彼女の神経が非常に細かいところにまで行き届いているという点です。「足跡があるということは昨日のとは違うな」というセリフからも冷静で細かい観察眼が伺えます。問題児ハワードを自分で引き受けるなど、面倒事から逃げない姿勢も◎。ほんとにメノリってかっこいいよね!
 ただ、その一方で不安にさいなまれるシャアラの様子には全く気づきません。今何をすべきかということは分かっても、人の感情の機微には疎いこのころの彼女の限界もまたわかります。文句を言うハワードに対しても叱りつけるだけで、諭す事はできません。彼女の中で正しいことの基準がはっきりしすぎていて、そこからはずれる人はただ悪いとしか思えないのでしょう。だからへばったハワードにかける言葉は「軟弱者め」。本気でそう思ってるね、メノリ。怖い怖い。

 で、そのハワードですが、なんか違和感があったんですよね、一話からずっと。なんでだろうと思っていたのですが、五話を見ていてその原因がわかりました。
 腕組みです。やたら腕組んでるんですよ、この話のハワード。
 全話見終わった私のハワードのイメージは「わがまま(素直)、やんちゃ、子供っぽい」です。年下のシンゴより、もっと言うとアダムよりも子供っぽい表情や仕草をする子と思っていたのですが、ここまでの話ではそうじゃないんです。
 怯えるシャアラに向けた「うるさい女だ」というセリフもそうなんですが、腕を組んだりポケットに手を突っ込んだりするし、表情も上から見下ろすようなフフンという偉そうでとんがったものだし、なんというか「ニヒルでかっこいい」んですよ。
 もちろんへたれなとこもいっぱいあります。揺れるシャトルの中での「パパー!」を初めとして、チャコに「体長50m云々」でからかわれたり、足を滑らせて潮だまりに落ちたり(しかも浅いのに大慌て)、メノリが全く疲れを見せないのに棒きれにすがりついてふらふらで帰ってきたり(わがままでへたれの上に役たたずなんてレッテルまで貼り付けてどうするんだいハワード)。
 でも基本動作や表情は「かっこいい路線」ということで、後半の愛嬌あふれる彼を見慣れた私としては違和感があったと。で、考えたんですが、ハワードは一生懸命カッコつけてたんじゃないかという結論に達しました。半分以上無意識でしょうけど、人前ではハワード財団のハワードJr.様という姿を作っていたんじゃないかなと。
 自分の回りに人が集まるのは、自分がハワードJr.だからであって、自分自身にはたいした価値がないということを、もしかしたらハワードが一番わかっていたのかもしれません。だからベルに対しても「お前の親父を僕のパパが拾ってやった」って言う。大好きなパパの権力と影響力の大きさを自分のものだと勘違いして振り回しているハワードは、その一方で大きなパパと比べて自分がとても小さいということも心の底で感じていた。だから「僕は偉いんだぞ、かっこいいんだぞ」という動作や表情を、無意識のうちに頑張って作っていたのかもしれないと思ったわけです。
 そう考えると、今後ひどくなっていくハワードのわがまま全開の暴れっぷりもまた、彼の成長の一段階だったんだって思えます。子分を引き連れ好き勝手やってるようで、コロニーのハワードは決して自分をありのままに見せてはいなかった。無意識に鎧をつけて孤独だった。それが、ここに来て財団からも子分からも切り離されたことでハワードは本当に自由になれた。今回りにいる子達はハワードの子分じゃないので、彼がハワードJr.だろうがなかろうが気にしない。だからカッコつけても意味がない。つけなくてもいい。
 ということで、カッコつけなくなったハワードはますますわがままで迷惑なくらい好き放題自由にふるまうようになった。ある意味で縛られていた感情を解放することができたわけですね。みんなには大迷惑でしたが演じていたハワードJr.の姿から抜け出せたという点でハワードにとっては成長です。
 その後、家出したら迎えに来てくれたり、捕まれば助けに来てくれたりと、ハワード財団とは関係のないところでありのままのハワードを受け入れてもらえたことで、彼はさらにもう一段階成長できる。自分の感情のままにふるまうだけではなくて、我慢することも他の人を思いやることもできるようになっていくわけです。パパ大好きなことに変わりはありませんけどね。
  ……この次の六話ではすでにお子ちゃまハワードになってますし、長々と書いたこれが深読みしすぎだってことはわかってるのですが、そうでも思わないとこれ以降のハワードのわがままぶりに本気で腹がたつので(笑)、うちのハワード設定はこれでいきます。

 唯一そんなハワードの子分だったベルはすでに前回で成長を遂げているので、今回は特に突っ込みどころがない。ベル父のおかげで宇宙時代に不似合いなサバイバル知識が豊富だとわかるくらいですか。ああ、あのカオルと普通にコミュニケーションがとれるという特技をも披露してましたな!

 この話のカオルって普通ですよね。「確かに聞こえたの。ね、カオル」というルナに「うん」って声に出してうなずいたし、ベルが森に行くと言ったとき、「オレも行こう」って言葉で意思表示してるし、森の中ではベルと普通に会話してるし、ルナとシャアラを助けに来てくれたし。
 それほど無愛想でも冷たくもないんですが。
 カオルってば話によって愛想の度合いに差がありすぎて心理がつかみにくい。ストーリー上の都合と言ってしまうと身も蓋もないのですが、ほんとにムラがあるような。
 本来は真面目で優しい子なので、無愛想な時は彼が意識して壁を作っている時ということかな。罪の意識が強いカオルは親しい人ができそうになったら頑張って冷たくするようにしたのかも? そんな時の刺々しいオーラもにっこり笑ってかわしてしまうベルとか、張り巡らせた壁を乗り越えて近づいてきてしまうルナとは仲良くなるのが早かったということなのかもしれません。が、カオルに関してはもう少し考察が必要です。


 誰が作る壁だろうが乗り越えてしまう主人公ルナの今回の見せ場は、やっぱりシャアラを慰め、励ますところでしょう。シャアラに「お父さんとお母さんに会いたい」って泣かれたときは辛かったんじゃないかと思うんですが。ルナだって会いたいけど、ルナはコロニーに戻っても会えない。もう二度と会えない。会いたいってシャアラみたいに泣きたいときはルナにもあったでしょうに。
 でも、ルナはシャアラに「きっと戻れる。私がついてる」って言ってあげられるんですね。
 ルナは唯一の家族であるチャコが一緒にいるし、ロカA2にいた期間も短くて、戻りたいって思う気持ちのもとになるものが、他の子よりずっと薄い。
 シャアラに泣かれたとき、ルナは自分でもそのことを意識したのかもしれないなって思うとちょっと切ないです。自分に何があってもシャアラ達は守らなきゃコロニーに帰してあげなきゃ、シャアラ達には待っている人がいるんだからって思ったのだとしたらかなり切ない。深読みしすぎだとは思うのですが後半のルナの振る舞いを知っている者としては本気で切ない……。

 ルナに慰められるシャアラは、シャトルで泣き叫んだり、「どうせ死んじゃうのよ」と言ったり、気弱でどうしようもないように見えますが、なかなかどうして図太いところもあるってわかりますね。
 「いい匂いがする」って言うところですよ。今さっきまで泣いていたのに、けろっとしてるー(笑)。意外と気分の切り替えが早いわ。
 人食い植物に石投げるところは大好きです。本当に臆病でどうしようもない子なら、自分が助かったところで一目散に逃げているか、まったく動けないかでしょう。石は当然というか全然効果がないわけですが、シャアラの心意気が光る場面です。それにハワードに向かってベルは勇敢だったと主張するところもいいですよね! コロニーにいるときはあんなにハワードのことを怖がっていたのに。ハワードのあまりのへたれぶりを見て、もう怖くなくなったのかもしれませんが(笑)。
 シャアラは一番普通な子なので、怖いものには怖がるし、寂しいときや悲しいときには泣いちゃったりもするけれど、不安にとらわれたままにはならない強さがあると分かる回でもありますよね。泣くだけ泣いたらちゃんと笑える強い子なのです。

 みんなが外を歩き回っている間に機械と格闘するシンゴとチャコはこの後もずっと機械担当ということでコンビを組んでいくわけですが、このときもうすでにナイスコンビですね。
 それはチャコよりシンゴの性格の賜かなと思います。シンゴって協調性とか思いやりとか、あと意外に策士な面も含めて(笑)、コミュニケーション能力に関しては、このメンバーの中でもトップクラスにいいものを持ってるんじゃないでしょうか(他のメンバーに難がありすぎとも言う)。ここでもエネルギー切れのチャコに「役に立たない」とか言わずに、休んでていいよっていたわりの言葉をかけてあげます。
 機械好きって設定のキャラによくある機械いじりしか能がないとか、一人でひたすら機械をいじってるだけってタイプじゃないです。6話と7話のシンゴも好き。
 
 チャコに関してらしいと思ったのはハワードとの会話でした。体長云々でからかうとこ。
 会ったばかりのハワードをすでに手玉に取れるほど見抜いているその手腕。コミカルな言動と外見からするとマスコットのようですが、チャコの目線は基本的にみんなの保護者としてのものだと思っています。ルナのお姉さんですからね。

 そんな七人と一匹が無人島生活をがんばってこなしていくことになるわけですよ。
 次回は水探しと火おこしに挑戦です。

 どーでもいい追記 ハンカチを持っていたのがシャアラとメノリだけってのが、ちょっとおかしかったです。中学生の男の子はやっぱりポッケにハンカチ入ってないのかな(笑)。ルナはきっとリュックには入ってたんだよね。

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