無人惑星サヴァイヴ感想

第十三話  ひとりじゃない

 「原作で1としか書かれていないことを100や1000にするのはOK。でも原作に1とあることを0にしてはいけない」 というのが私が二次創作をやる上での基本的な考え方です。捏造はよくても改竄はだめとそういう考えでやっております。

 ……でもこの13話だけはなかったことにしてしまいたい。
 13階や13号室って、外国のホテルとかだとないじゃないですか。だからサヴァイヴも13話はなかった――ってそういうわけにはいきませんね。ええ、わかってはいるんです。わかっては。

 でも実はそれくらいこの13話は好きじゃありません。はっきり言ってしまえば嫌いなんです。
 正直に言ってしまいますが、初めてこの13話を見たときの感想は「何これ?」でした。カオルメインの回というのはわかるけど、これでカオルの何を言おうとしたのかいまひとつわからなかったのです。これまでの流れをぶった切った突拍子もない回という印象もあり、ぽかんとしてしまいました。
 その後最終回まで視聴を続けDVDも購入して何度も見続けた現在は、この回も、話の流れはそう不自然なものでもないということはわかってきました。むしろ、カオルの成長のためにどうしても必要な回だったのだとわかるようになりました。しかし、それでも細かいけれど激しい違和感が各所に残り、見ていてとても気持ち悪いんです。
 要するに好みじゃないんですね。
 それが私のわがままなんだということはわかっているのですが、でもやっぱりこの回は好きになれないのです。
 そういうわけで、今回の感想はほぼ全て恨み節となっております。13話が好きだという方には申し訳ないのですが、正直に書かせていただきます。苦情やお叱り等は遠慮なくお寄せください。
 では、13話感想です。


 みんなのがんばりでいえができてから二週間。その後も塩作りなど工夫を重ねて生きているようです。塩作りでちゃんと海水を煮詰めてから干しているあたり、ベルの知識には改めて感心しますね。
 カオルも食料探しにがんばってます。ヘビを倒して食料ゲット。

 ……この果物って、ヘビが集めていたものなんですかね? ヘビは肉食だというイメージがあるし、果物を食べるヘビがいるかどうかは寡聞にしてよく知らないのですが、この果物、積み上げられているように見えるんですよねえ。木になっているようには見えないし、自然に落ちたと考えるのも不自然な様子だし。やっぱりヘビさんのお宝だったのかなあ。
 そのお宝をもらって帰るときに、やりを忘れないカオルはしっかりしていますけど、でも果物二つでいいの? もっともらって帰ればいいのに。君たち七人と一匹でしょ?

 なんでこの子達って物を運ぶための道具を作らないんでしょう。後半には鞄というか袋というかシャトルの布で作っていたと思いますけど、塩作りとかやる前に真っ先に作ってもいいのになあ。かごとか背負子とかあった方が、絶対食料探しの効率が上がるのに。アカデミーの購買で真っ先に買うべきなのはかごなんですよ! 遠心分離器とかは後でもいいんだ(って何の話だ)。竹があるんだから何か作ればいいのに。そう思いません?

 他のみんなはカオルより先にいえに戻っていました。
 日が暮れて暗いので、灯りをつけているのですけど、あれは誰が作ったのかしら。やっぱりベル? 液体に芯を浸して火をつけてますね。この液体は何の油でどうやって作ったんでしょうか(油じゃなくてアルコールとか?)。だからどうしてこんなものが作れるのに、君たちはかごを作らないんだい?
 そんな私の疑問はともかく、みんなは収穫がなかったようで暗い顔をしています。今までの場所では食料がとれなくなってきたと悩んでいます。
「せっかくいえが出来たのに、この先どーするんだよ」
 と相変わらず自分では何も考えないハワード。
「文句だけでなく、たまにはましな意見を言え」
 メノリがそう言うのももっともですよ。ちょっとは自分の頭も使おうね、ハワード。
 そこにカオルが一人食料を持って帰ります。

 ほらーカオル、見てご覧なさいな。二個じゃ足りないじゃないの。かごと背負子を作ろうよ。

 しかしここで問題になったのは、そういうことではなく、カオルの単独行動でした。

「ありがたいが、果物調達は私たちが任されていたはずだ。
スタンドプレーは手柄にならないぞ」
 
 ってなんじゃこりゃー!!!(ちゃぶ台返し)
 なんでメノリがこんなこと言うねん! おかしいやろー!!!!

 ――取り乱しましてすみません。でもこれだから13話は見るのが辛いんだ。作画がひどいとかもうそんなことはどうでもいい。もっとひどいアニメなんていくらでも知ってるさ。でも、でも、メノリ様がひどいのは見ていられません。11話と12話のメノリ様は何だったんだと言いたくなりますよ。ということで、この13話はメノリ様が不自然なので、もうなかったことにしていいですか。っていいわけないですね。わかってはいるんですよ。どれだけ納得いかなくとも、原作にある限り無視することはできません。落ち着いて考えましょうか。

 いえができて二週間というここにきて、カオルの単独行動が問題になるのは、確かに唐突ではありますが、それほど不自然なことではないのでしょう。
 これまでは生活するのに必死でしたから、細かいことを考える余裕がなかったんですよね。手段はどうあれ結果オーライというか。でもある程度落ち着いてきたので、今まで見えなかったことも気になるようになってきたんでしょう。
 これまで一番の問題児だったハワードが成長したということも関係していると思います。何かと面倒を起こすハワードでしたが、彼はちゃんと仕事をするようになりました。今日だって、「どれだけ歩いても果物一つ落ちてない」と言ってますから、さぼらず食料探しに参加したんでしょう。
 これまで統制を乱すと言えばハワードのことでしたが、彼が(メノリも、ですね)他のみんなと行動を共にするようになったことで、みんなからはずれて行動するカオルがめだつようになっちゃったんでしょうね。カオルはハワードと違ってさぼっているわけではありませんが、全員で協力して困難にあたらなければならない状況で、一人で勝手に自分の判断だけで行動するカオルを問題視するメノリは間違っていないと思います。
 むしろ、収穫があったと単純に喜ぶのではなく、もっと大きな目線で現在の問題点をとりあげたという意味では非常にメノリらしい行動と言えましょう。これまではカオルが一人で行動してもそれでうまくいっていましたが、今後それではやっていけなくなるかもしれません。実際、今までの場所では食料が取れないという新たな問題が生じた今、みんなの結束がより求められていくでしょう。事が大きくなる前に問題は取り除いておかなければならないと、メノリがここで敢えてカオルを責めた理由というか思考の流れはわかるのです。

 でも、でもですよ。
 それを咎めるセリフが「スタンドプレーは手柄にならないぞ」っていうのはなんで(泣)?
 手柄って何ですか。いったい誰がそんなこと気にしているというのですか。

 メノリ様は確かに人を諭したりたしなめたりするのが上手な人ではありませんよ。水運びでちょっと転んだだけのシンゴを思いっきり叱りとばしたり、リーダーになったばかりのルナに「最低だぞ」という言葉を向けたこともあります。メノリの舌鋒は鋭すぎて確かによく人を傷つけます。でもこの手柄発言はらしくない。こんな言い方をする人じゃないと思うのです。
 単独行動を問題にする以上、どうしてそれがいけないのかを言う人でしょう。かつて待機と決めた雨の日に勝手に食料を採りに行こうとしたカオルには「統制が乱れる」から認めるわけにはいかないって言ったじゃないですか。ルナに「リーダーとして最低だ」と言ったときも、不用意な発言がどうしていけないのかちゃんと言ったじゃないですか。シンゴを叱りとばした「一人のミスで全員が迷惑する」にしたって、理屈としては正しい。
 それでみんなが納得するかどうかは別の話です。メノリが人の感情を置き去りにしがちなことは否めない。でもメノリの発言は常に「正論」なのです。一方的あるいは一面的なものであっても、正しいと思ったことを言う人です。そして11話と12話で、メノリはそうした頑なな自分から一歩成長し、回りと自分を見つめる目線に余裕ができたんだと思っていたのに!
 なのにどうしてここで持ち出すのは「手柄」なんですか。この状況下で手柄にこだわることに何の意味があると。食料をたくさん採ってきた人がたくさん食べられるとかそんな決まりもないだろうに、手柄なんて言葉にどんな説得力があるというのですか。そんな言葉でカオルが自分の非を認めるとメノリは本気で思っているのでしょうか。それでもここで「手柄」なんて言葉を持ち出すってことはつまりメノリ様には、カオルは手柄を気にして勝手な行動をしているんだと見えているということですか。そんな……!
 「果物調達は私たちが任されていたはずだ」とは言うけど、カオルの仕事はどうなっているのかと聞かなかったあたり、カオルは自分に任された仕事を放り出してまで食料探しに行ったわけじゃないと思うんですが、どうしてここでこんな責められ方をしなければならないのでしょう。あまりに理不尽じゃないですか。

 12話では「カオルはなんでも作れるんだな」って結構評価高かったのに、メノリ様実はカオルのこと嫌いなのかしら。ソリア学園でのカオルは問題児スレスレのとこにいたんだろうし、あんまりよく思っていなくても不思議はないんだけど、これまでの生活で見直したりとかなかったのかな。いえづくりのときはカオルもちゃんと協力してたんだけどな。
 「自分の身は自分で守る」なんて発言もある単独行動なら自分もしてきたメノリが、カオルを責めるセリフが「手柄」なのがとても悲しい。
 こんな意味のない言葉で責めたところで、カオルがメノリを軽蔑するだけなのが本気で悲しい。
 あの雨の日に続いて「何言ってんだバーカ」くらいのことは思ってもおかしくないですよ。手柄なんてそんなものカオルが考えているはずないですからね。そんなセリフで責められても痛くもかゆくもないでしょうよ。12話まででせっかく仲間との距離を縮めてきたのに、これではまたカオルが他人を煩わしく思って距離を置いてしまうじゃありませんか。
 まあ13話はそういう話なんでしょうけどね! 
 その引き金を引く役目が、普段から発言の多いメノリに回ってくるのはわかりますけど、なんでこんな形なんですかね!

 たった一つのセリフにこだわりすぎですね。ごめんなさい。私メノリ様好きすぎるんです。

 この後、メノリに問題の解決を求められたルナは「まあまあ」と、とりあえず問題を保留。メノリが「理」ならルナは「情」を優先するタイプですし、せっかく食料をみつけてきてくれたカオルをこの場で責める気にはなれないでしょう。
「ありがとう、カオル」とお礼も忘れません。

 この果物がどこにあったんだろうという話になったところで、カオルは「もうない」って答えますね。これはやはりこの果物がヘビのお宝だったからでしょうか。木になっていたんじゃないから、同じ場所にいっても取れないよと。カオルが持ってこられなかった分はまだあるんでしょうが、継続して取れる場所じゃないから食料図に追加しても無駄だと。
 そうだとしてもカオルの言葉は足りませんねえ。まあ最後までこの子の言葉は足りませんけどねえ。

 ともかく明日も食料探しをがんばろうとまとめて次の日に。

 カオルはシャアラと魚係となったようで、一緒にしかけをのぞいていますが魚はかかりません。……だからなんでフェアリーレイクで釣らないのかと。
 それはともかく、やっぱりカオルは自分に任された仕事を放り出したりはしてないようです。シャアラと魚係となれば、ちゃんとシャアラと一緒に動いてますからね。しかし魚が捕れないのに黙ってみていても無駄だと合理的なカオルは判断したようで、その場を離れてどこかへ。
 シャアラには「心配するな」と言い残したあたり、メノリの昨日の発言を多少は気にしているともとれますが、そもそもカオルの勝手な行動って意外に少ないんですよね。一人で働くことは多いけど、協力を求められたときはちゃんと力を貸しているし、声をかけられれば返事するし。多分、一番勝手だったのは6話じゃないかな。シンゴとチャコと同じ食料調達班に入れられたのに、二人と離れて行動していたところ。「勝手な行動」と批難できるようなのってあれくらいじゃないかなあ。12話でも、ハワードとベルに「任せておけ」って言ったらしいし。
 他の人の意見よりも自分の判断が先に立つんだけど、カオルはカオルなりに回りに合わせてやっていますよね。それだけに「スタンドプレー」とか責められてしまうのはあまりに気の毒だと思ってしまうんですが(しつこいですか?)。
 
 しかしこの行動も責められてしまうカオル。
 夕飯が出来上がっているのにおあずけをくらわされてしまったハワードの機嫌が悪いのはわかりますけど、メノリまでそうなんでしょうか。「どこへ行ってた」という声がとても怖いです。
「みんなが心配するから、単独行動はやめてね」
 そうやんわりとたしなめるルナに、カオルはちゃんと自分の行動を理由を説明しますね。珍しいようですが、話しかけられれば答える方が通常のカオル。言葉は足りなくても返事くらいはしますよね。「もうない。行っても無駄だ」みたいにね。珍しいのは今回のセリフがちょっと長い(笑)って事くらい。
 そんなカオルが「スタンドプレーは手柄にならないぞ」に始まるメノリの批難に答えないのは、答えるのも馬鹿馬鹿しいと思っているからなんじゃないですかね。ハワードの「独り占めする気じゃないだろうな」等に答えないのと同じようにね。今回のメノリの発言は、カオルの中でハワードの八つ当たりやかんしゃくと同レベルでくくられているんでしょうね。ああもう本当にどうして13話のメノリはこんなにアレなんですかね!(どれだよ)

「シャアラを置き去りにしておいて、言い訳するつもりか?」
「だいたい見てみい。今日は大収穫やでえ」
「昨日喜ばれたから、調子にのっちゃったんだろう? カオル」

 ――だからなんでこういう流れにするんだろう。

 今回はメノリが不自然だと怒っているわけじゃありませんよ。置き去りとか言い訳とか使われている言葉がいちいち剣呑ですが、まあこれならメノリが言いそうなセリフではあると思います。シャアラを一人にしたという具体的なポイントを責めているわけですからね。
 ただし、チャコのセリフとセットで聞くと、カオルが帰ってくる前にハワードとメノリが交わしていた会話と矛盾して嫌な雰囲気なんですが。

「ちぇっ。こんなに魚が捕れるんなら、無理に探しに行くこともなかったんだ」
「結果論だ。言っても始まらない」

 今日大収穫になるかどうかなんて誰にもわからなかったことですよね。だから無理に探さなくてもよかったなんて言うのは結果論だとメノリは切り捨てたわけですよね。先のことはわからないんだから、その時その時の最善を尽くすべきなんだと。結果としてそれが必要ない努力になったとしても、そんなことを言っても始まらないと。
 なのに、万一に備えて努力したカオルに対して仲間達が向ける言葉が、この流れになるってなんで? こんな仲間達ならカオルが敬遠しても仕方がないなって、見ている方としてもそんなふうに思ってしまうじゃありませんか。食事にしようと言われても、カオルが一人どこかへ行ってしまうのは当然だと、そう思ってしまうじゃありませんか。

「そんなぁ。一緒に食べようよ」

 シャアラ! 君はいい子だ!(感涙)
 必要なのはこういうセリフだと思います。
 
 なんだかなあ。ここまでの流れに説得力がないから、この後のルナとカオルのシーンもイマイチ心に響かないんですよ。なんでカオルが説得されなくちゃいけないのか、こんな流れじゃ全然わからない。改めるべきなのはカオルじゃなくて、他の仲間の態度なんじゃないのか。

 ルナとカオルの会話自体はいいシーンだと思います。
 カオルが何を改めなければならないのか、それがよくわかりますから。

 この時点でのカオルは、みんなと協力して行動することはあっても、仲間の一員ではないんだと思います。七人と一匹の物語ではなく、六人と一匹とそしてカオルの物語。そんなふうに言えるかもしれません。カオルは常に他のメンバーの外にいる存在として、外から手を貸しているのです。だからメノリやルナ、他の仲間がどう思おうとも、自分が必要だと最善だと思った行動しかしない。他の人間の思惑とか配慮といったものを彼が気にかけないのは、彼がそれを必要とする立場にないからです。
 カオルは一人だから。
 仲間だとか、みんなが心配するとか言われても自分には関係ない。そんなふうに思っていたんじゃないでしょうか。
 それで「何も心配するな」というセリフも出るんでしょう。自分は仲間じゃないから、心配する必要はないと。心配するのは「みんなが勝手にやったことだ」というセリフもね。

 しかし、そんなカオルの心情も少しずつ変わってきていたのでしょう。6話でシンゴやチャコが危険なところに行きそうになってもほっておいたカオルですが、11話ではメノリの手の傷を気遣うようになっていました。みんなのためにというような、仲間の一員として人を思いやる感情がカオルにも次第にうまれてきていたんじゃないでしょうか。
「みんなが勝手にやったことだ」
 というセリフは、ため息と一緒にはき出されます。これは「俺が勝手にやったことだ」という自嘲もこもっていたんじゃないかというのは、考えすぎでしょうか。
 ルナがどれほど言葉を重ねてもカオルはうなずきません。これはカオルの「一人に戻ろう」という決意の表れのように思います。知らず知らず仲間の一員になりかけていた自分を自覚して、自分の立場を仲間の外に置き直そうと考えているのでしょう。
 「(カオルの)心配なんか心からできるやつは、この世にはいない」自分は、そういう人間なのだからと。
 だからルナが持ってきてくれた夕飯にも手をつけなかったんだと思います。仲間の作った夕食を食べる権利も立場もカオルにはないのですから、それを食べてはいけないのです。

 13話は、六人と一匹から離れた立場にいたカオルを、七人と一匹の中に放り込む、そういう回なのでしょう。どれほど役に立ったとしても外からの助っ人でしかなかったカオルが、頼りになる仲間の一人になるための回。だから「ひとりじゃない」というタイトルは秀逸だと思いますね。13話は今後のカオルの成長のためにどうしても必要な回だったんですね。

 でもね! だったらどうしてカオルをこんな形で一人にするの!?

 もうそれがどうしても納得いかん。
 カオルを仲間の一員に迎え入れる回なんだから、仲間というものはいいものなんだってことをもっと強調してくれてもいいんじゃありませんかね。
 理不尽な批難を浴びせられてそれで一人で作業するカオルって、単に冷たくされたからすねてるように見えちゃうじゃないですか。そしてそんな理不尽なことする仲間の一員になろうなんて、絶対思えないじゃないですか。
 カオルが一人に戻ろうと思うきっかけをもっと丁寧に描いて欲しかった。
 単独行動を責める流れはいいですよ。でも「みんなが心配するから単独行動はやめてほしい」というのを、ルナのセリフでしか表現していないのが不満なのです。仲間全員にもっと心配されて、そんな仲間の優しさに触れたことで、自分がいつの間にか仲間の一員になってしまっているということにカオルは気づき、そして仲間になりきってしまうことは嫌だと抵抗した。そういうふうにこの前半を描いてくれれば、この13話の意味はもっとわかりやすくなったと思うのに。

 ルナとの会話だけを見るならば、どうしてカオルはこんなに頑ななんだろうってカオルの行動を不審に思いますが、前半を見ているとみんながあまりに冷たいので、説得するルナの方が不自然に見えてしまう。カオルは悪くないじゃん!ってね。12話までそれなりに仲良くやっていただけに、カオルが一人になるまでの流れにひどく違和感を覚えます。
 冷たいのはメノリとハワードだけだって思いますか? でもベルだって一言もフォローしてませんよ。シンゴもチャコもね。唯一シャアラのあのセリフだけが温かい。せめてこれくらい(別窓)でいいから、仲間全員がカオルを気遣う描写があればなあ……。

 ともかくここまでの流れの中でカオルは孤立します。みんなからつまはじきにされたわけではなく、カオル自身が一人になることを選んだのです(――と思うけど、でもなんだかいじめられっ子みたいに見えるんだ。だから13話を見るのは切ないんだ)。
 オオトカゲに向かっていくのは、無謀には違いないんですが、カオルなりの合理的な判断によるものだと思いますよ。ここを餌場だと思われたら厄介です。オオトカゲを倒してしまうか、倒せなくても二度とここに近づきたくないと思わせる程度に痛めつけて追い払わないといけません。必要なことならそれがどれほど困難でも危険でもやろうとするカオルくん。
 ……その辺はメノリと行動原理が似ているんだけどなあ。似ているだけになんか腹立つのかなあ、メノリ(泣)

 後半ドローンを投石で倒すカオルらしからぬことですが、オオトカゲ相手に負傷。ルナの助けを得てひとまず難を逃れます。
「またスタンドプレーかよ」というハワードはまあいい。まだ坊ちゃんは成長しきってないから。
「一人じゃ無理だよ」というシンゴには感激。その調子でカオルを気遣ってあげて。

「ルナまで危ない目にあわせた。そればかりかトカゲは当分居座るぞ」

 ひ、ひどいよ、メノリ!
 ルナまで危ない目にってとこはいいよ。カオルの単独行動のせいで、カオル自身ばかりか他の仲間まで危険な目に遭うようなことになったら、それは困るどころの話じゃないもんね。そこはカオルにも反省してもらえばいいけど、でもでも、トカゲが当分居座るのもカオルのせいなの!? それは違うでしょ。絶対違うでしょ! 
 ああもうほんとに13話のメノリ様ってば……!!!

「でも無事で良かった」
 ああ、シャアラ。君は本当にいい子だ(感涙)

 手当すら拒むカオルはやっぱり一人でいたいと思っているんでしょう。
「いいんだ。俺の勝手だ」とルナの心配を切り捨てます。
 それにはルナも堪忍袋の緒が切れたようです。命は大切にしなければだめだとカオルを一喝。カオルが仲間になることを拒んでいるのを、理由はわからないにしても、ルナは察したのでしょうね。
「ひとりで生きてきたと思ったら大間違いなんだからね」
 おそらくお父さんのことを思っているのでしょう。ルナの目から涙が……

 ってしまったぁぁぁぁあ!
 全話制覇の52話小話で、カオルに「ルナの泣くを見るのは初めてだ」って言わせてる! 思いっきりルナがカオルの目の前で泣いてるよ! しまった。13話は嫌いだってろくに見なかったからすっかり忘れ、て、た。「原作にあることをなかったことにしてはいけない」とかって偉そうに言ったくせに自分が思いっきりやってた。あほだ。救いようのない程あほだ。でも書き直すのはもう無理。削除するしかないけど、あの話削除するのは辛い……。
 あの、故意に事実を無視したわけじゃなくて、本気で忘れていたんで、あのままにしておくというのはダメでしょうか……?(言動不一致な私)

 と、とりあえずこの感想を書ききりましょう。52話については後で考えます。
 狼藉の限りを尽くしているオオトカゲ。「どうするんだ」というまたしても自分では考えずに丸投げするハワードに、ルナは退治するしかないと言います。ケガでは済まないとメノリは慎重ですが、ベルもやるしかないとルナの意見を後押しします。
 ああ、ベル。君の発言は前半でも欲しかったよ。カオルのためにも何か一言でいいから言ってあげて欲しかったよ。
 重ねてのルナの説得に、どのみちいつかは退治しなければとみんなも納得しました。カオルももう少ししゃべればみんなの理解も得られたのかもしれませんね。

「ほんとにこんなので大丈夫なのか?」
 というハワードの不安は見ている私の不安でもありますが、トカゲ退治作戦は決行。そしてやはり大丈夫ではなく、ピンチに陥るシンゴ。
 それを助けに入ったルナを見て、カオルも助けに走ります。カオルが思い出したのはルナの涙の説得(やっぱり「泣くのを見るのは初めてだ」ってセリフは不自然ですね……。すっごい印象に残ってるよね、これは)。カオルはルナの行動を見て、ルナの言う「心配」が口先だけのものじゃないとわかって、それでルナのことを見直し、さらに一目置くようになったのでしょう。

 カオルに助けられてほっと力が抜けてしまうルナ。ここって「カオルナ」という観点ではものすごく貴重なシーンと言えるでしょう。だって、ルナがカオルを頼っているんですもの。
 23話以降のルナは、もちろんカオルを頼りにしているけれど、でも頼り切ってはいないんですよね。むしろカオルのことを守ろうとかほっとけないとか、そういう母親のような立場に立っているように見えます。でもこの頃はカオルの弱さを知らないし、海蛇だの食虫植物だのから助けてもらったこともあるし、頼れるとか強いというイメージでとらえているわけでしょう? だからこの辺の二人でカオルナ話を書くのと、23話以降の二人でカオルナ話を書くのでは、全く違ったものが書けるはずなんですよね。
「一番無茶なのは誰なんだよ」
 ってセリフとか、カオルナスキーとしてはほんとにおいしい場面だ。
 ラストシーンのカオルのセリフ「オレももらおう」で微笑みうなずくルナとかね。ときめくね!
 カオルもみんなと夕食をとるようになって、めでたしめでたし。


 ――ってちょっと待て! それだけ!?
 カオルナ描写があるのは嬉しいけど、13話の主題ってそれじゃないだろ。カオルがルナを認めて終わりとかってそれでいいのでしょうか。
 初めて見たときに「何これ?」って思った理由がこれですよ。散々カオルが理不尽な目にあって孤立したあげくカオルナで締めって、え? カオルが仲良くならなくちゃいけないのは、ルナだけじゃないよね?
 カオルが危険を顧みずルナを助けに入ったことで、メノリのカオルに対する評価は上がったと思います。他のみんなもね、感心も感謝もしていると思いますよ。でも、前半で提示された問題点「カオルはまだ仲間じゃない」はこれで解決されたことになるんですか?
 他のみんなはこれでカオルのことを見直してくれて、カオルを仲間に迎えてくれたということになるのかもしれません。でも「カオルは仲間じゃない」って思っていたのは、他のメンバーじゃなくてカオル自身だったんじゃないのかしら。他の仲間は12話までを見ていても、特にカオルに対して隔意を持っているようには見えないし、充分仲間扱いしてくれていますよね。だから問題なのはカオル自身の心の持ち方で、それこそが13話の主題だと思っていたのに、これじゃカオルが認めた仲間はルナだけってことになるんじゃ……。
 いや、まあ、うん。ルナの勇敢な姿に心を動かされて、それでカオルの頑なな心もほぐれて、カオルも仲間との間に敢えて壁を立てようとは思わなくなったということなんでしょうし、それはそれでめでたしでいいんですけど、だったら前半でカオルを孤立させた意味って何なんでしょう。あんな理不尽な扱いを受けたことに対するフォローは無しですか。あんなに嫌な目にあったけどオレも仲間の一員に加わるかって、この流れでカオルは思えるんだろうか。

 これじゃあ散々メノリが嫌な役やってカオルのこと責め立てたのも、カオルナを盛り上げるための演出のように見えてしまうんですが。あの散々感じた違和感全部その為に作られたものなの? 13話はカオルとルナが仲良くなるための回でしたってそんな薄い内容でいいのでしょうか。カオルとルナは大いに仲良くなってくれたらいいと思いますが、でもそれを描くために他が変なことになるのは御免被りたい。

 そんなわけで、やっぱり今でも13話はあまり好きではありません。カオルナはいらないというわけじゃなくて、この演出じゃカオルナのために前半の変な流れを作ったみたいに思えて、どうしても変な後味が残るからです。
 でもまあ、なんとかカオルも仲間の一員になれて、晴れて七人と一匹になって次回へ続く……のか?

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