今日という日 (サヴァイヴ ルナ) 考えに考えて選び、絶好のタイミングで差し出した贈り物だというのに、肝心の相手が怪訝そうに目を細めて受け取らないので、ルナは思いっきり顔をしかめた。 「もう、今日は誕生日でしょ!?」 誕生日を祝うのにふさわしい態度ではないとわかっていても、声が尖るのはどうしようもない。 彼の誕生日がこういう展開になるのは、これで何回目だろう。 自分の恋人はまめな男だとルナは思う。連絡は途切れたことがないし、近くに来るときは必ず寄ってくれる。珍しいものを見つけたと言っては折にふれ土産を寄こすし、当然ルナの誕生日を忘れたことはない。 ルナが考えたことをそのまま口に出すと、彼は奇妙に眉を寄せ、そんなわけないだろうと言った。 「別に自分の誕生日を覚えていないわけじゃない」 「たとえ忘れても別に問題はない」 せっかく喜んでもらおうと張り切っていた気持ちが空振りに終わって不機嫌なルナは、ことさらにつんと澄まして冷たく言い捨てた。ルナとしてはそのつもりだったのだが、彼から返ってきたのは甘やかな苦笑という非常に器用な表情だった。 「オレが忘れても、ルナが覚えていてくれるんだろう?」 そんな顔で、しかも渡した贈り物を掲げてそう言われたら、もう返す言葉がない。いや、言葉を返す必要がない。 |