「いやーっ!!」
「ど、どないしたんや!」
聞こえてきた悲鳴にチャコが飛んでいくと、ルナはフライパンを手に涙目になっていた。
「ほんのちょっと目を離しただけなのに〜」
そんな泣き言を聞き流してフライパンをのぞき込んでみると、見事に炭化した物体がそこにあった。
「……なんやこれ」
「チャーハン」
ルナはがっくりと肩を落とし、力なく答えた。言われてみれば確かに元はご飯だったらしい粒が見える。が、隅から隅まで真っ黒焦げになっているので、本当にそれがご飯だったのかどうか断言はできなかった。
「これはもう食べられへんな」
「ああもったいない」
お昼ご飯どうしようとお腹を鳴らしながら、ルナはチャーハンになり損ねた物体を始末しようとした。
「ちょい待ち!」
ゴミ箱に放り込む寸前でチャコが声をかけた。
「ルナ、ちょっとそれでやってみてほしいことがあるねん」
「これで?」
作った自分が言うのもなんだが、どこからどうみても役に立ちそうにない真っ黒い固まりをどうしようというのか。ルナは首を傾げた。
「料理の本通りに作ってみたんだけど、失敗しちゃったの。よかったら食べてみて、それで何が悪かったのか教えてくれないかな?」
お弁当箱の中味は例のチャーハンもどき。
ルナはそれを恐る恐る差し出して、相手の反応をうかがった。
ベルは一口食べた。そして「単純に油のつけすぎと炒めすぎじゃないかな」と口元をひきつらせながら言った。
シンゴは眼鏡に手をやってまじまじと弁当箱の中味を観察した。そして「ルナ、これ何かの冗談?」と、片方の眉毛を上げながら言った。
「はあ? こんなの食べられるわけないだろ?」と、一目見るなり言ったのはハワードだ。もちろん一口も食べなかった。
カオルは全部食べた。そうして無表情無感動に「火加減に気をつけろ」とだけ言った。
「ねえ、チャコ。これに何の意味があったの?」
ルナは帰宅してチャコに事の結果を報告すると、頬をふくらませた。
あんなの見せるの恥ずかしかったんだからね、と説明を迫るルナをよそに、チャコはあごに手をあてて考え込んだ。
……今回はちょっと難しいな、と。
ハワードは論外。シンゴはそっけないがごく真っ当な反応ともいえる。ベルは優しさを評価してもいいが事なかれ主義ととれないこともない。カオルに至ってはけなげと言うべきか、奴は人外だと思うべきなのか微妙なところだ。
今後も調査は継続すべきやな。
今回だけで判断を下すことはないと、チャコは一人うなずいた。
「ねえ、だからなんだったのよー!」
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