救助船が来たらボクを置いてみんな帰ってしまうのか。
アダムの訴えにルナは一緒に帰ろうと言ってくれた。
「ずーっと一緒よ」
「うん」
大好きなルナの言葉に、アダムは笑みをつくってうなずいた。
だけど。
だけどルナ。
一緒って言ってくれたけど、その中にボクのお父さんとお母さんは入ってないよね。
救助船へむけたのろしを上げるために出かけるルナ達の後ろ姿を見送って、アダムは自分が長い間眠っていた遺跡を見上げた。
アルデュラムギエットの未来のために。
その言葉を贈ってくれたとき、お母さんは泣いていた。記憶の中の両親はいつも優しそうに見える。アダムのことをとても大切に思っていたはずだという、ルナの言葉を、アダムも信じられるし、信じたいと思う。
しかし、実際に対面した両親は、アダムとルナのことを襲った。アダムの過ごしやすい環境にという言葉とはうらはらに、厳しい冬をこの島にもたらした。それは実体ではなかったけれど、そこに両親の意志が働いていないとは思えない。
何かの間違いだとルナは言う。
でも、じゃあ、何が間違っているの?
何が本当なの?
アダムにはわからない。
アダムにわかるのは、ただ自分の気持ちだけだった。
お父さんとお母さんに会いたいという、自分の気持ちだけだった。
会って聞きたいことがたくさんあった。
チャコとシンゴに促されて遺跡の中に戻りながら、アダムは思った。
ルナは一緒に帰ろうと言ってくれたけれど、ボクは一緒には行けないだろうと。
コロニーはアダムの帰る場所ではないから。
お父さんとお母さんはどこにいるのか。どうすればお父さんとお母さんが探せるのか。どうやったらお父さんとお母さんの所へ行けるのか。その前に一人でちゃんとやっていけるのか。
わからないことだらけだったけれど、アダムはどうしてもお父さんとお母さんに会いたかった。
どうしても会いたかった。