ふわふわのオムレツをお腹いっぱい食べたい。
そう言い出したのはハワードだったが、誰も異存はなかったので、全員でメノリがみつけたという鳥の巣まで卵をとりに行くことになった。
「ここだ。あの上に鳥の巣がある」
ほぼというよりもまさに垂直にそそり立つ崖を指さすと、メノリは手近なくぼみに手をかけて早速登り始めた。カオルが無言でそれに続く。
「結構手ごたえがありそうね」
闘志がわくと笑いながら腕まくりをしたのはルナだ。
「靴は脱いだ方がいいかな」
ベルはそう言って靴の紐を解くと、ルナに続いて崖に向かった。
「僕たちには無理そうだね」
「そうねえ」
「うちらは手足が短いからなあ」
シンゴとシャアラ、そしてチャコはそう結論付けると、薪とそれからデザートにする果物を探しに森へと入っていった。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
手足が短いからとか、問題にすべきなのは絶対にそこじゃない。
誰か一人くらい、初めてこの崖を見たときの衝撃をぼくと共有してくれてもいいんじゃないのか。
それともおかしいのはぼくの方だっていうのか!?
その叫びはしかし、どちらのグループにもぶつけられることはなかった。
崖を登るべきか森に入るべきかとっさには決めかねて、とり残されたハワードは地団太を踏んだ。
その日の夕食はハワードの希望通り大きなふわふわのオムレツだったが、ハワードの分だけはずいぶんと苦い味がしたという。