第四十六話 会いたかった

「これから先は枝が細くて僕には無理だ。アダムなら行けるよ」
「う、うん」
 うなずいたアダムが先に進んだのを確認するとハワードは下のシャアラと目配せを交わした。
 そして口の端を持ち上げると、上下に大きく枝をゆらし始めた。
 ぎしぎしと音を立てて枝がしなる。
「う、うわぁぁ」
 たまらずアダムは足をすべらせた。が、すんでのところで枝にしがみついた。そのまましっかり枝を抱き込んで放さない。
「ちっ」
 アダムが必死でこらえる様子にハワードは舌打ちをもらした。そうしてさらに大きく飛び跳ねて枝をゆらす。
「う、うわぁぁ!!」
 葉がこすれてばさばさと音をたてるほど枝をしならせた結果、姿勢を保てなくなり、とうとう落ちてしまった。
 ただし、アダムではなく、ハワードが。
『ハワード!!』
 シャアラとアダムの声に合わせて派手な水音としぶきが上がる。
「ハワード! 大丈夫?」
 落とされそうになったことも忘れて、アダムがハワードを気遣う言葉をかけた。
 無言で岸まで泳いでくるハワードを見て、今度はシャアラが舌打ちをこぼした。
 ハワードは何があってもハワードだというお話。

終わり

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