「これから先は枝が細くて僕には無理だ。アダムなら行けるよ」
「う、うん」
うなずいたアダムが先に進んだのを確認するとハワードは下のシャアラと目配せを交わした。
そして口の端を持ち上げると、上下に大きく枝をゆらし始めた。
ぎしぎしと音を立てて枝がしなる。
「う、うわぁぁ」
たまらずアダムは足をすべらせた。が、すんでのところで枝にしがみついた。そのまましっかり枝を抱き込んで放さない。
「ちっ」
アダムが必死でこらえる様子にハワードは舌打ちをもらした。そうしてさらに大きく飛び跳ねて枝をゆらす。
「う、うわぁぁ!!」
葉がこすれてばさばさと音をたてるほど枝をしならせた結果、姿勢を保てなくなり、とうとう落ちてしまった。
ただし、アダムではなく、ハワードが。
『ハワード!!』
シャアラとアダムの声に合わせて派手な水音としぶきが上がる。
「ハワード! 大丈夫?」
落とされそうになったことも忘れて、アダムがハワードを気遣う言葉をかけた。
無言で岸まで泳いでくるハワードを見て、今度はシャアラが舌打ちをこぼした。
ハワードは何があってもハワードだというお話。