第四十二話 不思議な力

 ねえ、チャコ。覚えてる?
 お父さんと、たき火をしたこと、あったじゃない?
 そうそう。二人でケンカしたとき。でもあれはチャコの方が悪いわよ。内緒にしていてって言ったのに、ばらしちゃうんだもん。
 えー。だって、あれは。
 ……もう。話がそれちゃったじゃない。
 あの時お父さんが言っていたことを思い出したの。
 地球以外の惑星を人類が住めるように変化させることは宇宙全体やその星のことを考えたら、もしかしたら傲慢なことなんじゃないかって。
 それをやらなければ人類が滅んでしまう。そうやって自分を納得させようとするけれど、時々どうしてもそんなことを考えてしまうんだって。
 私はまだ小さかったから、お父さんが何を言いたいのか全然わからなかったけれど、とても大切なことを言ってるんだろうなってことは、わかったわ。
 うん。今ならわかるような気がするの。
 この宇宙に生きているのは人類だけじゃない。だから人類のことだけを考えていてはいけないんだって、そういうことかなって。
 他の命のことも大事にしなくちゃいけないのよね。
 だから、サヴァイヴが他のたくさんの命のために人間は必要ないと判断して、この惑星の人類を滅ぼした。
 その判断を、一方的に間違っていると決めつけることはできないのかもしれない。
 え? なあに?
 ううん。違うわよ。
 人間は滅んだ方がいいなんて、そんなことを思っているわけじゃないの。
 だって、人間だってこの宇宙に生きる大切な命であることに、かわりはないでしょ?
 だから、人間にだって精一杯、生きている限り生きぬく権利はあると思う。
 ただその時に、自分たちだけ生きるんじゃなくて、他の命と一緒に生きていくことをちゃんと考えなくちゃいけないんだと思うの。
 ――まだ、どうしたらいいのかなんて、わからない。でも、考えることをやめちゃいけないと思う。
 人間と他のたくさんの命が一緒に生きていく道を。

終わり

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