チャコの品定め

 チャコが見つけた木の実は、とても鮮やかな色をしていた。
 チャコの指でもつまめるくらい小さなその木の実を一粒、口に放り込んで、チャコはにんまりと笑った。小粒なわりに果汁がたっぷり、糖分も充分。非常にチャコ好みの味だったのだ。
 ええもんみっけ。
 ほくほく顔でチャコはさらなる採取にとりかかった。
 ところが夢中でつんでいるうちにいくつか取り落とし、さらにはそれを踏んでしまったので、チャコは盛大に顔をしかめた。
「うちの自慢の毛並みが台無しや」
  鮮やかな色のたっぷり果汁。点々とまだらに染まった自分の足を見下ろして、チャコは苦々しいため息をついた。が、次の瞬間、チャコはぽんと手をうった。正確には打とうとしたものの手の中の木の実に気づいて途中で止め、胸の内だけでその動作を行った。

「これは使えるかもしれん」

 

 みんなのいえに戻ると、チャコはこれ見よがしにポーズをとりながら男性陣の前を歩き回った。

「チャコ? それどうしたの?」

「へえ、チャコ。その口紅いいじゃない。なかなかおしゃれだね」

「それ木の実で染めたのかい? 他にも何かに使えるかもしれない。どこにあったのか教えてくれないかな」

「なんだそりゃあ。へんなもんでも食ったのか?」

「…………」(ひたすら不審げなまなざし)

 

 美しくなりたいとおしゃれに気を遣う女心に気づき、それを尊重するのもいい男の条件だと常々思っているチャコは、この機会にみんなを試したのだ。

 ルナ、意外に意外なのが良物件やで。
 さまざまな種類の視線を浴びながら、チャコは腕組みをして重々しくうなずいた。

 ルナの保護者をもって自ら任ずるチャコの審査は、これが最初でも最後でもなかったらしいが、ルナがその結果を参考にしたかどうかは、また別のお話。

 

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