「友達が増えたみたいね。私たちの9番目の仲間」
いえづくりを手伝ってくれたパグゥが森へを帰る姿を見送って、ルナが言ったセリフを、シャアラが受けた。
「そうね、ペットって言うには大きすぎるもの」
それを背中で聞いたルナはよろめき、その右肩ががくりと下がった。
「また始まったよ。このKYちゃんは……」
肩をすくめたのはハワードだったが、シャアラは気を悪くしたりはしなかった。ハワードが誰かを馬鹿にするような態度をとるのはいつものことだったし、それに「KY」という死語の意味がわからなかったということもある。
「だって、あんなに大きかったらおうちに入らないじゃない?」
ただ、自分の言葉に否定的な反応をされたことはわかるので、シャアラは自分の意見を補足した。怒ったわけではなく、単にわかってもらえなかったから説明しようというだけの、ごく素直な対応である。
しかしその補足を聞いても、ハワードは何ら共感できなかったらしく、面倒くさげに首を振り足元にいたチャコを親指でさした。
「ペットなんて、こいつだけでもうっとうしいのに」
「誰がペットや!」
とんだとばっちりで話題が回ってきたチャコは、跳び上がって抗議した。
「うちは、ルナのお・ね・え・さ・ん、や! ペット呼ばわりなんかせんといてや!」
「そうだよ。失礼だよ、ハワード」
チャコの援護をしたのは、チャコ曰く「妹」のルナではなく、シンゴだった。
「チャコのタイプは個別のパーソナリティーを設定されているんだから、ちゃんと尊重してあげないと駄目だよ」
「そういう問題とちゃう!」
チャコはますますいきりたち、この際自分の価値と立場を皆にちゃんとわからせてやろうと意気込んだ。しかし、その流れを遮ったのはハワード曰く「KY」のシャアラだった。
「チャコもパグゥも、色々働いてみんなの役に立ってくれているし、やっぱり単なるペットっていうのとは違うわよね」
「そういう問題なのかな……」
どういう表情を選択すればいいのかわからないという風情で、ベルがそう漏らした。
「生活に役立つ動物というと、それは家畜と言うのではないか?」
生真面目に意見を述べたのはメノリだったが、この意見は誰の共感も呼ばなかった。
「なお悪いわ!」
「家畜なんてかわいそうよ」
「役立てるために飼育したわけじゃないし、家畜っていうのは違うんじゃない?」
「そういう問題なのかな……」
「もうなんだっていいだろ」
「だーかーらー! 仲間だって言ってるでしょー!!!!」
収拾のつかなくなった会話を、リーダーの一喝が打ち切った。
皆が口を閉ざし、静かになった夕暮れの湖畔を、その残響が滑っていった。
「仲間、か……」
仲間って一体なんなんだろう……。
その残響が残っているうちに、一人騒動に加わらなかったカオルがこぼしたつぶやきは色々と複雑だった。
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