「ねえ、ベルどこにいるか知らない?」 仕事に使っていた道具を片づけてる時に、ルナの声が聞こえて、ベルは顔をあげた。どうやら自分のことを探しているらしい。ベルはそっと眉を寄せると声のした方へ歩いていった。 「呼んだかい? ルナ」 声をかけるとルナがこちらを向いた。その表情もやはり固く、ベルの眉間のしわはより深くなりかけたのだが、ベルはそれを押しとどめ笑顔を浮かべた。何かあったのなら、自分は落ち着かなければと思ったのだ。 「ごめんね」 ようやく聞けたルナの言葉は、にっこり笑顔を添えられた謝罪だった。謝られる理由が、というよりそもそもここに至るまでの事情がわからず、ベルは目をしばたたいた。 「たいしたことじゃないの。ただ、ちょっとベルの顔が見たくなって」 言われたのが今でなければ赤面もののセリフなのだが、頭の中が疑問符で一杯になっているベルにとっては、それはさらに疑問符を追加するだけのものでしかなかった。 「ごめんね、邪魔しちゃって」 結局ルナは何の説明もすることなく去っていった。ベルは首をひねりつつ片づけに戻った。 だが、ベルの困惑はさらに続いた。 「ねえベル。今いいかしら?」 どういうわけか、尖り気味の声で女の子達が自分を探すので、 「何か、用かい?」 と顔を出してみれば、 「ううん。用はないの。でもありがとう」 そんなふうに何の用件も告げられずに終わるということが、その後何度もあったのだ。これだけ続くと、まあいいかなどと悠長なことも言っていられず、どういうことかとかなり真剣に理由を尋ねたりもしたのだが、女の子達はいつも答えを濁し、はっきりとしたことは何も教えてくれなかった。 「カオル、俺何かしたかな…………?」
「やっぱり、ベルが一番よねー!」 ベルの悲哀をよそに、女の子達の方は絶好調で、上機嫌だった。 ベルの受難は、ストレスの多いこの惑星での生活が終わるまで――終わってからも彼らの付き合いが続く以上は続いたそうだ。 |
癒しといえばベルでしょう。
彼の笑顔に癒されたのは私だけではないはずだ。
なのにこんな不幸風味の話でごめんね、ベル。